コミュニケーションを学ぶ放課後の居場所「放課後等デイサービス」
デイサービスと聞くと、高齢者の介護サービスを思い浮かべるかもしれませんが、放課後等デイサービスは、小学生から高校生までの子どもたちが、発達の特性にあわせて、コミュニケーションや生活の支援を受けることができる福祉サービスです。金沢区には19の放課後等デイサービスがあり(2022年11月現在)、「コンパス金沢文庫第2教室」は2021年7月にオープンしました。
取材の日、午後3時を過ぎると、小学校の授業を終えて、職員さんと一緒に送迎車で来た子どもたちが集まりはじめました。ここでは小学1年生〜中学1年生まで26人が利用登録していて、その多くが2022年春に入学した1年生。金沢区内の公立小学校や養護学校など、地域のさまざまな学校から通ってきます。
他の子たちとの関わりを通して、コミュニケーション能力を身につけてほしい、との願いから通わせている保護者が多いそう。「集団が苦手な子が多いので、より小集団の環境から慣れていけるよう、居場所を提供しながら支援するのが放課後等デイサービスの特徴」と話すのは山本さん。
集団の中のひとりではなく、一人ひとりをみる
放課後等デイサービスは、子ども10人に対して最低2人の職員を配置することが法律で定められていて、コンパスでは「集団の中のひとりではなく、一人ひとりを見ることを大切にしています」と山本さんは話します。
子ども一人ひとりに合った支援を行うため、コンパスを初めて利用する際に保護者と面談し、本人が何に困っているのか、できるようになってほしいことなどを聞き取ります。放課後を自分のペースで過ごす、個別支援級から一般級への転籍を見据えて集団に慣れるなど、目標と支援内容を決め、一日のプログラムの中で、声かけや参加方法を工夫しながら支援を行っているそうです。
自分で生活を組み立てられるよう支援
コンパスの一日はおおまかに、パソコンの脳トレゲーム、宿題、おやつ、自由時間、活動プログラム、掃除、帰りの会、で構成されています。しかしこの流れはあくまで目安で、宿題の前におやつを食べる、遊んでから宿題をやるなど、やる順番や取り組む時間は皆違うそう。「本人に訊いて、相談して、その子が決めた時間にやることができるように支援しています。自分で一日を組み立てられるようになることも大切なことです」と井上さん。あるお子さんは、コンパスに来たらまず遊び、職員と4時から宿題をやると決めると、時間になると自分で折りたたみ机を出して宿題を始められるようになったそうです。
「職員の声かけだけで気持ちを切り替えて次の行動に移れるのか、声かけをして職員と一緒に取り組むことで切り替えて次の行動に移れるのか、一人ひとり有効な方法は違う」と井上さんは言います。今日学校であったことを聞いたり、一緒にカードゲームや学校ごっこをして遊んだりしながら、細やかなやりとりをする姿に頭が下がる思いです。
「場づくりがしたい」、「成長を見守りたい」
児童発達支援管理責任者の井上さんは、大学で社会福祉を学び、卒業後に母子生活支援施設で働きました。そこで発達の特性のある子どもたちの居場所や不登校の問題にふれたことで、つながりや場づくりがしたいと、2021年7月からコンパスを運営する法人に入職しました。大人と子どもがフラットな立場でいることを大切にしていて、「子どもたちと気持ちが通じた時や、こうかなと思って取り組んだ支援ができた時はとても嬉しい」と教えてくれました。
管理者の山本さんは、小学校の個別支援級でダウン症の児童の担任を持った経験から障害分野の教育に関心を持ち、「子どもたちの成長を見守って喜びあいたい」と、2021年4月に入職しました。
放課後等デイサービスで働く職員には、保育士や小学校教師、社会福祉士、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、心理士などの資格を持つ人が多いそう。子どもたちが、放課後の時間を、安全に、安心して過ごせること、小さな集団のなかで新しい経験をして成長できる「コンパス」のような居場所があることは、保護者にとっても、子どもたちにとっても、とても心強いと感じました。
そしてこのような居場所をつくる職員さんたちが、熱い想いを持って、日々温かく子どもたちに向き合う様子を垣間見て、自分が住み暮らす地域で子どもたちが見守られ、いきいきと育っていける環境があることへの感謝と応援の気持ちを抱いて、取材を終えました。
写真・文=廣瀬 夕紀
Information
放課後等デイサービス『コンパス金沢文庫第2教室』(運営:社会福祉法人 昴)
〒236-0021 神奈川県横浜市金沢区泥亀1丁目1-1 大京ビル2F