
横浜市では、令和8年度から市立中学校全校で全員給食がスタートします。その提供拠点の一つとして、金沢区に新しい学校給食センターが整備されました。私たちが取材に伺ったのは令和7年10月で、当時は竣工前でしたが、建物内を見学し、お話を伺うことができました。現在(掲載時点)では建物が完成し、4月からの稼働開始に向けて本格的な準備が進んでいます。
全国で普段当たり前のように食べている給食がどのように作られ、どんな思いで支えられているのかを知りたいと思い、ハーベストネクスト株式会社の皆さんに説明していただきながら見学しました。新センターはまだ運用前でしたが、これまで多くの現場で給食を提供してきた方々の経験や、その思いを伺う貴重な機会となりました。
新学校給食センターの規模と役割
金沢区に新設されたこの給食センターは、地上2階建てで、横浜スタジアムのグラウンドに匹敵するほどの広さがあります。ここから、金沢区・中区・南区・港南区・磯子区・戸塚区・栄区の7区にある56校へ給食を配送し、約28,000人の生徒や教職員に向けて給食を提供する計画です。
センター内の業務は調理班、盛付班、炊飯班、アレルギー対応食班、洗浄班、配送・配膳班、さらに衛生管理や維持管理といった役割に分かれ、多くの人が関わる体制で運営されます。これらの仕組みは、これまでの給食づくりで培われてきた経験を新センターでも生かしながら運用していくと伺いました。

給食ができるまで
見学では、給食がどのような手順で作られていくのか、前日の準備から配送までの一連の流れを教えていただきました。まず前日は、納品された食材の検品から始まります。数量や傷みの有無を一つひとつ確認し、翌日の大量調理が滞りなく進むように整える大切な工程です。
当日は朝5時から調理がスタートします。下処理を終えた食材は、大きな回転釜や専用の調理機器を使って、おかず、汁物、ボイル野菜、揚げ物などへと仕上げられていきます。でき上がった料理はすぐに冷却され、菌が増えやすい温度帯に留まらないようにする冷却のスピードが安全を守る鍵になると伺いました。
盛り付けの工程は、あえて手作業で行われているそうです。見た目や分量を丁寧に整えながら、学校ごとに盛り付けをしていきます。汁物のように温かさが大切なメニューは、冷たいおかずとの提供タイミングが揃うよう調理の開始時間をずらすなど、細かな段取りが組まれていることにも驚きました。
その後、給食は配送車に積み込まれて各学校に届けられます。配送後に戻ってくる食器や容器は洗浄班が丁寧に洗い、乾燥や消毒の工程を経て、翌日に備えて整えていきます。こうして前日から当日までの作業がつながり、一日分の給食が完成します。
徹底された衛生管理
施設内では、食の安全を守るための仕組みが細かく整えられていました。作業区域や人の動線は交差しないように分けられており、入室時の服装、手洗い、消毒のルールも厳しく定められています。特にアレルギー対応の作業区画や器具は専用のものを使い、混入を防ぐための対策が徹底されていることが印象的でした。
大量調理では、一つのミスが大きな影響につながるため、設備や手順だけでなく、働く人一人ひとりの行動が安全につながります。説明を伺いながら、日々の給食が当たり前に届けられるのは、こうした細やかなルールと、現場の皆さんが積み重ねている意識によるものなのだと実感しました。

見えない相手へ丁寧に届けるという姿勢
インタビューでは、これまでの給食づくりの経験から生まれた考え方を伺いました。特に印象に残ったのは、「食べる子どもたちの姿が目の前にいなくても、一つひとつ丁寧に作ることを大事にしている」という言葉です。生徒の顔を見る機会は多くなく、さらに感染症対策のため自分たちが作った給食を試食できないこともあり、味の最終確認が難しい場面もあるといいます。それでも、学期末に届く子どもたちからの手紙や、施設見学に来た生徒の感想が大きな励みになり、「今日の一食」に向き合う姿勢を支えてきたと話していました。
また、現場では立場に関係なく意見を出しやすい雰囲気づくりも大切にされているそうです。多くの工程が関わる仕事だからこそ、コミュニケーションを大切にする職場づくりが、日々の業務をしっかり支えていると感じました。

仕事に必要な力
取材の中では、給食づくりの現場で大切にされている考え方についてもお話を伺いました。特に印象に残ったのは、「決められたことを正しくこなすだけでなく、自分で考える力や発想力が大切」という言葉です。新しい献立の提案や、より良い運営のための工夫など、日々の仕事には“自分で考えて動くこと”が求められる場面が多いといいます。
また、「学生のうちに行ったことのない場所へ行き、いろんな人と話してほしい」という言葉もありました。特別な体験でなくても、日常の中で出会う人や場所が、物事を見る視野や判断の引き出しを広げてくれると伺い、仕事に通じる実感のこもったアドバイスだと感じました。
さらに、「生活リズムを整えることは、どの仕事にも共通して大切」という話もありました。給食づくりは早朝からの作業が中心となることも多く、健康管理がそのまま子どもたちの一食につながります。
当たり前の一食の裏側にあるもの
今回の取材を通して感じたのは、給食づくりが単なる流れ作業ではなく、「目の前にいない相手を思いながら行う仕事」だということでした。一食ができるまでには数多くの工程があり、そこには、安全、おいしさ、あたたかさを同時に実現するための工夫が積み重ねられています。
伺ったお話の一つひとつが、給食づくりの現場で働く方々が大切にしている価値観を表していて、見学前には想像できなかった多くの視点に気づくことができました。

一食を届ける現場で感じたこと
給食センターの現場には、時間通りに安全な給食を届けるための細かな工夫と、見えない相手に向き合い続ける人の思いが込められていました。まだ稼働前ではありますが、これまで積み重ねてきた経験や姿勢がそのまま受け継がれ、今後の運用に生かされていくのだと感じました。
今回の取材を通して、普段は何気なく食べている一食の背景に、多くの人の仕事と気遣いがあることを知ることができました。給食の見え方が大きく変わるとともに、その大切さをあらためて実感する機会となりました。

【取材・文】
関東学院大学 友野研究室
佐々木 涼、須田 理華子、山口 莉音、小林 百華、佐野 諒、菅原 涼太、CHEN LONGLONG
【協力】
ハーベストネクスト株式会社