「蛇口をひねれば水が出る」「気づけばごみがなくなっている」。
当たり前の風景の裏にどれだけの仕事があるのか、正直、深く考えたことがありませんでした。今回は、配管工事や設備管理、貯水槽清掃、廃棄物の収集運搬までを担う神奈川保健事業社さんを取材し、暮らしの見えない支えについてお話を伺いました。
「排水管は動脈みたい」と言われて、すとんと腑に落ちた
見学の序盤、排水管は「人間でいう動脈みたいなもの」という説明をいただき、すとんと腑に落ちました。流れが滞れば生活が回らない——言葉にされると、当たり前の実感が急に輪郭を持ちます。社内で配管サンプルを触らせていただくと、軽くて曲げられるのに意外と硬くて頑丈という感触があり、見えない場所に時代に合わせた素材の進化があることを体で理解できました。昔は鉄が主流だったものの、いまはポリ塩化ビニル管などが使われていると伺い、納得しました。

数字のスケールに「そんなに!?」と驚いた清掃件数
貯水槽の清掃は年間1200〜1500件、排水管の清掃は年間3万箇所にのぼると伺い、思わず「そんなに!?」と声が出ました。貯水槽は年1回の清掃が必要で、日常の設備点検や予防保全も欠かせないそうです。見えないところで積み重なる膨大な作業が、私たちの“当たり前”を静かに支えているのだと実感しました。

廃棄物はただ捨てられるのではなく、資源へ戻す流れがあった
廃棄物の扱いについては、対象が8項目にわたり、神奈川県に加えて東京都・埼玉県・千葉県、さらに米軍基地からの運搬にも対応していると伺い、業務の広さに驚きました。回収後は福浦リサイクルセンターで手作業の分別が行われ、資源化できるものはリサイクルへ、どうしてもできないものだけが最終処分へ。将来的に「埋立てゼロ」を目指しているという話も印象に残りました。地域内だけでなく箱根でも案件を担当していると伺い、エリアの広がりも実感しました。見学前は何気なく見ていたパッカー車が、生活の循環を守る重要な存在に思えてきました。
社内の空気は“百花繚乱”。多様な強みが一つに向かう
部署や背景の異なる方々が、それぞれの強みを持ち寄って働く姿を拝見し、ここには“百花繚乱”という言葉がよく似合うと感じました。社内では年齢や立場に関係なく意見を交わしながら、現場がより良くなる方向へ自然に力が集まっていきます。総務は正確さとダブルチェックを徹底し、営業事務は許可や申請、書類作成など細部まで丁寧に整えることで信頼の土台を築くと伺いました。営業はお客様の「やりたいこと」を言葉にして共有し、写真や資料で仕上がりイメージを合わせ、工事前後の認識のズレをなくす工夫を重ねていると聞き、納得しました。日々の記録と報告を積み重ねる習慣は、トラブルの芽を早く見つけ、緊急時にも迷わず動ける体制につながっているそうです。この積み重ねがあるからこそ、顧客の約9割がリピーターだという話にも自然と頷けました。

「困っているなら助けたい」
忘れられないエピソードがあります。大雨の日、地下駐車場が水没してしまい、どうしていいか分からず困っていた方から一本の連絡が入ったとき、すぐに複数拠点から人員と機材を集めて対応したと伺いました。本来の業務範囲を超えてでも、「困っているなら助けたい」という思いで動く。その姿勢に、胸が熱くなりました。
学生として受け取った言葉
最後に、学生である私たちへアドバイスをいただきました。やる気次第で経験はどんどん広がること、物事を前向きに捉えて進めること、挨拶や約束、そして謙虚さといった基本を大切にすること。学生のうちに多くの人と出会い、いろいろな場所を見ておくことが将来の力になるという話は、今の自分にまっすぐ響きました。

見学を通して感じた“インフラのお医者さん”の意味
今回の取材で強く感じたのは、私たちの生活は見える部分だけで支えられているわけではないということです。排水管や貯水槽の清掃、設備管理、廃棄物の分別など、どれも派手ではありませんが、暮らしの血流を守る確かな仕事でした。そして、社員の皆さんの姿勢から“インフラのお医者さん”という言葉の意味が胸に落ちました。困ったときに助け、当たり前の毎日を静かに支え続ける姿は、地域の安心そのものだと思います。

【取材・文】
関東学院大学 友野研究室
佐々木 涼、松井 誠実、須田 理華子、山口 莉音、小林 百華、佐野 隼斗、菅原 涼太、東 夏未
【協力】