「海の近くに住んでいるから」が興味のきっかけ

「海を通して世界が広がる」。皆さんはこのフレーズにどんな光景を思い浮かべますか。 自分も最初そうでしたが、始めるハードルを高く感じる人が多いのが海のスポーツ。実際にセイラビリティ横濱のヨット体験会に来てみると、参加者やスタッフさんには車いすユーザーを含む親子連れの姿も。

活動に使用している船は「ハンザディンギー(ハンザ)」という小型ヨットです。見た目は公園でよく見かける手漕ぎのボートとくらべてもひと回り小さく感じるサイズ感で、一本マストのかわいらしいヨットです(写真を参照)。障害の有無や年齢を問わず、誰もが乗船できるユニバーサルデザインとなっています。

セイラビリテイ横濱は、「障害の有無に関わらず共にセーリング活動を行うことで、人生の喜びを分かち合い、生活の質を高めよう」という理念のもと、2008年に設立されたセーリング愛好者有志によるボランテイア団体です。市内の海洋、福祉、教育等の組織や団体等と連携を深めてセーリング普及を進める活動をしています。

さて、桟橋に親子で参加しているかたがいらしたので、さっそくお話を伺ってみました。

 

ーー今日はなぜ参加しましたか?

「せっかく海の近くに住んでいるので、今日はこの体験会を目指してやってきました。小学生の娘が海が好きなので、ヨットを体験させたいと思いネットで調べて。普段は葉山の海岸でカヤックや素潜りなどを楽しんでいるのですが、自宅のそばのこの辺でも何かしたいと思っていたところです。ここでヨット教室を開いてくれれば通いたいですね」(参加のご夫婦)

ベイサイドマリーナの中で行う乗船体験

なるほど、自宅の近くで開催される体験会はセーリングを知る良いきっかけになりますね。海が近い金沢区ならではの良さだと感じました。

 

「こんなに世界が広がると思ってもみなかった」活動にすっかりハマっています

次に親子でスタッフをされている小杉さん(大学生の息子さんが車いすユーザー)にお話を伺いました。

 

ーースタッフとして活動するきっかけは?

「息子が大学に入学した頃に、高校時代の恩師(副理事長の加山さん)に誘っていただいて体験会に参加したことがきっかけです。親としては肢体不自由で車いすユーザーの息子が『ヨットに乗れる』と考えたことがなかったのですが、それが今ではひとりで乗れるようになりました。スタッフとしての活動のほかに、各地のセイラビリティ活動団体との交流レガッタ(ハンザのヨット大会)もあり、そこでは選手として参加しています」(母親の紀子さん)

 

ーー活動してなにか変化はありましたか?

「これまで参加したヨット大会は三重や広島など遠方での開催され、その付き添いを含めて、私たちの行動範囲は大きく広がりました。(障がい者の親として)こんなに世界が広がるとは思ってもみなかったことです」(紀子さん)

「外に出て風を感じることが好きなので、自然の中で活動することが楽しいです!」(息子の良樹さん)

 

ーーこれからの活動については?

「最初は息子の付き添いだったのですが、見ているうちに自分でもどうしても乗りたくなりました。自分の操船でヨットが進んでいくことに、今ではすっかりハマっています。誰よりも速く上手く走れるようになりたいので(笑)、操船の技術向上を目指し、さらにヨットの楽しさをもっと多くの人に広げていきたいと思っています」(紀子さん)

「この活動が大きく広がり、障がいの有無に関わらずヨットを楽しんでもらいたいですね」(良樹さん)

お二人とも目がキラキラして、この活動に夢中な様子とヨットの楽しさが伝わってきました。

 

「会社員をしているだけでは得られない、多くの仲間とのつながり」がとても楽しい

スタッフの太田尾(おおたお)英治さんにもお話をうかがいました。ちなみに太田尾さんは、ほかのスタッフから「気づかいの太田尾」と呼ばれているほどに、ソフトな話し方と笑顔がとても素敵な方です。

笑顔が素敵なインストラクターの太田尾さん

ーースタッフとして活動するきっかけとなったのは?

「ヨットに乗りたい気持ちからです(笑)。セイラビリティ横濱の活動に参加してからは、スタッフの養成講座を通して技術的な面も向上しました。今はインストラクターとして活動しています」

 

ーー活動してなにか変化はありましたか?

「会社員をしているだけでは得られない、多くの仲間とのつながりができました。それがとても楽しいです!」

 

ーーこれからの活動については?

「5年後もこの活動を続けていたいですね。これからはこの活動をもっと広げていきたいです!」

 

筆者は太田尾さん同乗のもと、ヨット体験をしたわけですが、その安心感たるや揺るぎないものがありました。その人ならではの人生経験と人柄がそう感じさせたのかもしれません。

 

『夢はパラリンピック出場!』

最後に理事長の山本勤さんにお話をうかがいました。

ヨットを見守るスタッフの皆さん

ーーセイラビリティの活動にどんな人に参加して欲しいですか?

「すべての人に参加して欲しいです(笑)。

一方でスタッフについては、ヨットに乗りたいだけではなくて、周りに気配りができる人が望まれます。私たちもスタッフの養成には時間をかけています。ヨットの乗船体験は海で行うためにリスクもあります。たとえば、木製の桟橋でトゲが刺さったり、あるいは車いすであれば、桟橋の先端に車止めがなければ落水の危険もあります。笑顔でお帰りいただくまでの一つひとつに気配りが求められるからです」

 

ーーなるほど、桟橋を移動する参加者の前後にスタッフ数名が寄り添いながら陸上までお見送りしていたのは、そのような訳なのですね。

スタッフさんが陸上まで同行案内

ーーこれからの活動については?

「夢はパラリンピック出場です!

あと金沢区からも応援(共催?)をしてもらえることかな(笑)」

  

ハンザをバックに当日のスタッフの皆さん勢ぞろい

セイラビリティ横濱では春から秋にかけてヨットの体験会を開催しています。金沢区やベイサイドマリーナの近くにお住まいの方は、ぜひ参加なさってみてはいかがでしょうか。みなさんも「海を通して世界が広がる」という体験に出会えるかもしれません。

 

写真・文:村上タッキー

 

Information

NPO法人セイラビリティ横濱

https://www.sailability-yokohama.com/