十人十色!「市民ライター養成講座」受講のきっかけ

金沢区区政推進課が主催し、認定NPO法人森ノオトが企画・運営する2024年度の「市民ライター養成講座」全4回では、参加者同士で改めて金沢区の魅力を語り合ったり、取材依頼・取材本番の進め方、文章の組み立て方などを学んだりしました。

講座は、高校生からシニア世代までの老若男女、さまざまな背景を持った受講生が参加。「自分が呼ばれたい名前」で呼びあう、話しやすい雰囲気づくりもあり、ワークショップでは活発に意見が交わされました。

筆者である私は講座を通して、受講生の皆さんが取材先に対する熱い想いを持っていることに気づきます。一人ひとりが素敵な考えを原動力に記事作成をしている姿を読者の皆さんにも知ってほしいと思いました。既に複数の記事を発信している先輩区民ライターである一期生の渡邉武瑠さん(以下、たけるさん)、二期生の松浦修さん(以下、Samさん)、三期生の喜納真里子(以下、きなまり)それぞれの体験談をお伝えします。

一期生の渡邉武瑠さん(たけるさん)

ーーお二人は、「市民ライター養成講座」をどのように知ったのですか? また、どうして受講しようと思ったのでしょうか。

たけるさん:私は会社員をしています。まちづくりに興味関心が高く、地元の地域情報からヒントを得るため、定期的に金沢区役所の資料コーナーに足を運んでおり、たまたまチラシを見つけました。仕事でもアウトプットとして文章を書く機会がありますが、ビジネス文書のため、心情を表現することはありません。「市民ライター養成講座」の案内を見て、熱意を表現する文章や人の気持ちを動かすことができる文章を書いてみたいと思い、受講しました。

Samさん:私はビジュアルデザインを生業にしていたことも影響し、文章を書くことは非常に苦手です。金沢区には37年住んでいますが、仕事の関係もあり、金沢区に在住した半分以上の時間を海外で過ごしていて、地域のことを全く知らないと気づきました。喜寿を迎え、地域のことを知りたいと思っていた矢先に、SNSで「市民ライター養成講座」のことを知りました。興味はあったものの、自信がなく、「素人でもできるのか?」と問い合わせたところ、「住民目線で、あなたならではの記事を書いてください」と答えてもらい、安心して受講することができました。

たけるさん:地域のことを知りたいと思う気持ちは私も同じです。進学をきっかけに、静岡県から横浜市に引っ越してきたため、金沢区には知り合いがいませんでした。

Samさん:長く住んでいるからと言って、地域のことを知っているわけではないですよ。私は講座を受講して初めて、金沢区の人口数や工業地域の歴史、山や海の豊かな自然を知りました。きなまりさんはどうやって「市民ライター養成講座」を知ったのですか?

きなまり:私は家に届く広報誌でした。受講の動機は2つです。一つ目は、自身のキャリアの中で副業を視野に入れたときに、どんな選択肢があるのか知りたいと思いました。文章を書くことを仕事にするなら、訓練が必要なので有料の講座を受講しようか悩んでいたところに、本講座と出会いました。無料で記事の書き方を教えてくれるなんてラッキー! と思い、即応募しました。二つ目は、自身の職場で共同運営しているコミュニティをきっかけに、社内外のメディアから取材を受ける機会が増えました。私がどう回答すると、記事を書く人が楽なのかを知りたかったです。ライターそのものに興味がありました。

Samさんと私は同じ講座を受講していたので、お互いを知っていたのですが、たけるさんとは、Samさんも私も初めての対面でした。同じ講座を受け、区民ライターとして活動していても、それぞれ知るきっかけも参加する動機もさまざまです。区民ライターという共通点があることで話が弾んでいきます。

  

読者の心を動かす区民ライターならではの知恵と工夫

ーーたけるさんは子ども食堂と子どもホスピス、SamさんはPIAフェスとまちの先生について記事にしています。それぞれ、取材先を選んだ理由を教えてください。

たけるさん:地域で暮らす人やコミュニティに関心があり、金沢区での生活を始めて間もなく、子ども食堂でのボランティア活動に参加しました。子ども食堂は ”貧困世帯が食事をしに来る場所” というイメージを持つ方が一定数いらっしゃいますが、誰でも利用できる地域の居場所なんです。地域の人々が協力して子どもの成長を支えたり、ボランティアの参加者自身も活動を通して活力を得ている様子は、私にとって非常に興味深く、誤ったイメージで貼られているレッテルを剝がしていきたいと考えました。私は、2021年からボランティアとして子ども食堂で活動していましたが、代表者がなぜ子ども食堂を始めようと思ったのか? 価値観や理念を言語化して、地域の人に知ってほしいと思い、2022年に記事を書きました。

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また、子どもホスピスも病いや死等のネガティブなイメージを持つ方が一定数いらっしゃいます。でも、実際に活動にふれてみると、生命にかかわる病気と共に生きるお子さんとご家族が限られた時間を過ごすための場所であることが分かります。子ども食堂と同じく、既存のイメージを払しょくすべく、実態を伝えたいと思いました。

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Samさん:え? 子どもホスピスの記事を書いたのが、たけるさんなの? 私はあの記事を読んで、記事全体の網羅性だけではなく、事業にも感銘を受けて、金沢八景の施設まで行きました。

きなまり:すごい! 読者の心を動かしていますね! Samさんは施設訪問しなかったんですか?

Samさん:いきなり行っても迷惑かもしれないと思って、外観を見るだけでした。

たけるさん:訪問のハードルは高いですよね。子どもホスピスのケースでは、直接的なケアについては専門性を問われるので、ハードルの高さを感じる方もいるかもしれませんが、支援の方法も多岐に渡るのでぜひ調べてみてください。

きなまり:何事も参加するにはハードルがありますが、最初の一歩はどんなことだと思いますか?

たけるさん:知ることがはじめの一歩だと思います。私は知らないことで偏見が生まれると感じています。どういう方法でもいいので、実態を知ってもらうことで偏見を減らせると信じています。私が書いた記事が一助になればうれしいです。

Samさん:英語には「awareness」という言葉があって、認識する・知るという意味なのですが、やはり知ることが入口だと思います。私は講座を通して、金沢区の工業地域のことを知ったのですが、PIAフェスのことは知りませんでした。取材の中で、参加企業の皆さんがイベント開催に向けて、数カ月前から業務が終わった後に準備を進めていることがわかり、驚きました。もちろん、主催側もPRをしているのですが、区民ライター視点では異なる発信ができるのではないかと考えています。

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2回目の取材は街の先生を題材にしました。金沢区には約180名のボランティア先生が登録されています。住民の4人に1人が高齢者の金沢区を少しでも元気にしたいと思いました。サラリーマンOB会は80名を超える参加者がいますが、私も取材をきっかけにメンバーになりました。

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2024年12月にサラリーマンOB会でイベント講師を依頼され講演をしてきました。区民ライターが私の人生・生活を大きく変えました。取材先にアクセスが容易なケースもあることは区民ライターの醍醐味のひとつだと考えています。大手メディアの取材が来ていることもあるのですが、区民の視点で、主催者の気持ちやどうして始めたのか? 等を伝えることで、大手メディアとの差別化を図っています。

たけるさん:知恵と工夫の見せ所だと思います。区民ライターだからこそ、取材が終了した後も含めて興味を持った活動に関わり続けることができる。また、自分自身が活動の担い手としてある程度の期間携わっていることを取材する場合も、視点を変えることで新たな一面が見えてくる部分もあります。

二期生の松浦修さん(Samさん)

Samさん:区民ライターは知恵と工夫を駆使して、いかに伝えるかがおもしろさのひとつなので、頭を使います。また、取材先に足を運ぶので、身体を動かします。健康寿命を延ばす要因になっているのではないかと思います。自身がそうだったように、仕事をリタイアすると組織から離れ、ひとりになってしまう人もいます。人と人とのつながりを見たり、実際につながったりする地縁(住んでいる土地や過去に住んでいた土地などによる縁故関係や地域コミュニティ)の体験が区民ライターとして動く原動力になっています。

たけるさん:私は今期の取材も含めて「地域で子どもを育てる」を共通テーマにしています。自身も家族を持つことを考える時期になってきているものの、価値観の多様化や経済的・時間的な余裕がなく子どもを持たない選択をする人も多いと言われています。その中で、若者が子どもを持たない理由の中に「未来に希望を持つことができない」という声があることが気になりました。子どもを持つ・持たないは個人の選択であることを前提としたうえで、未来に希望がないから子どもを持ちたいと思えない状況は苦しいものだと感じました。一方で、子ども食堂や子どもホスピスの活動にふれる中で、温かい気持ちを持って地域の子育て支援に参加する人々の存在を知りました。地域の子育て支援の実践者のお話を伺い発信することで、希望を捨てるのはまだ早いかもしれない、自分にもできる支援があるかもしれないと私と同世代の人をはじめ、多くの人に考えてほしいと思ったことがテーマ設定の理由です。地域で子どもを育てることのハードルを下げる一助になればうれしいです。

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三期生、認定NPO法人森ノオト、金沢区役所区政推進課の皆さん

実践者の考えや理念を直接聴けることが区民ライターのおもしろさと語るたけるさん。自分だけが知るのはもったいないので、多くの人に実践者の声を届けたいという想いを教えてくれました。Samさんは地縁を感じ、知れば知るほど訪問したい人が増えていくと話します。ご縁がつながり、新しい出会いを生み出す区民ライターの記事が、あなたの人生をちょっぴり動かすかもしれません。

 

地域に携わることでつなぐ地縁の輪

さいごに、ここまで読んでくださった方におふたりからメッセージをもらいました。

Samさん: 昨今、「コミュニテイー」と言う概念をもっと大切にしたいと思っています。簡単に言えば、社会的な人と人のつながりや、情報や知識の共有によって助け合いが生まれることを願っています。つまり、私には、「市民ライター養成講座」へのチャレンジも、いわば、一つの実践です。各方面への取材を通して、お金で買えないご縁や出会いをいただきました。素人の私でも、記事を書いた後に、森ノオトの皆さんに校正してもらえるので、安心しました。森ノオトや受講生の皆さんに感謝しています。

たけるさん:お住まいの地域には活躍の場があります。地域にとって重要な活動を行っている一方で発信力に課題のある人や団体の声を届けることで、やりがいや生きがいを見つけることにつながるかもしれません。複数の居場所を持つことで、悲しいことや悔しい気持ちを分散し、楽しさや喜びを倍増する効果もあります。

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”災害地に赴き、がれきの撤去や炊き出しをする”ことが私のボランティア活動のイメージでした。たけるさんが話しているように、区民ライターを知る前の私は、ボランティア活動の一面しか見えていませんでした。区民ライターは取材先の調査・選定、取材交渉、アポ取り、取材・インタビュー・写真撮影、記事作成、修正をひとりでこなします。一見孤独な作業に見えますが、「市民ライター養成講座」の中で進捗状況を共有し、コメントもらうことで見えなかった視点が得られることがありました。また、本記事はたけるさん、Samさんと共同で作成しました。思わぬ仲間が見つかることもおもしろさのひとつではないかと私は実感を持ちました。区民ライターに限らず、地域に携わることであなたのスキルを底上げすることに加えて、人的ネットワークを広げる効果もあるかもしれません。

  

写真・文:喜納真里子

協力:渡邉武瑠、松浦修

 

Information

金沢区魅力発信ポータルサイト「カナスタ」で区民ライターの記事を公開中! 横浜市金沢区

https://www.city.yokohama.lg.jp/kanazawa/shokai/miryoku/writer.html