蔵書は約5,000冊 コミックも文芸書も

以前来館した際、図書コーナーに、図書館でも長い予約待ちの本が揃いで配架されているのを見つけ、宝を発掘したような嬉しい気持ちになりました。「コミュニティハウスの図書コーナーには、意外と興味深い本がそろっているのでは?」そんな思いが湧き上がってきて、もっとじっくり図書コーナーを見てみたい、宝探しをしてみたいと思い始めました。

六浦南コミュニティハウスには、購入本・寄贈本合わせて約5,000冊の蔵書があります。一般書と児童書の割合は約半分ずつ。学校の図書室にはないコミックもズラッとシリーズで並んでいます。

まずは、目玉コーナーからご紹介していきましょう。

原作本コーナー ~本から読む派?映画から見る派?~

コミュニティハウスを入ってすぐ左側の光の差し込む明るい壁一面に、「原作本コーナー」があります。映画やドラマの原作本が、ポスターやチラシ、関係書類等と一緒に、表紙が見える形でズラリと並んでおり、「あなたは本から読む派? 映画から見る派?」というポップもついています。本を読んだ人も映画を見た人も、どちらでもない人も、思わず足を止めて見てしまう、来館者を惹きつける素敵な仕掛けとなっています。入館すると、真っ先にこのコーナーに向かう人もいるという人気のコーナーです。

堀川館長が4年前に『散り椿』(葉室麟:作 角川書店:刊)を寄贈した際に、映画になっていたことを知り、スタッフと一緒に「原作本」のプレートをつけて展示したことがきっかけです。そこから、どんどん原作本の展示が広がり、スタッフが映画のチラシを集めたり、新聞記事をチェックしたりと、スタッフみんなで楽しみながらコーナーを作り上げていきました。映画になるということは原作も面白いということなので、映画からでも本からでも、両方の楽しみ方ができるというわけです。

コーナーに展示できる本の数は限られているので、時間が経ったものは一般の書棚に移動しますが、集めた映画のチラシは77枚にも及び、以前展示したものはすべてファイルに収めてあります。

原作本コーナー
映画のチラシを収めたファイル。公開日やあらすじはスタッフが展示用に記入しました

テーマ別コーナー ~作者と賞とカレーと~

原作本コーナーの隣には、「葉室麟」「江戸川乱歩賞」「本屋大賞」と様々な切り口で分類されたコーナーがあります。葉室麟コーナーは、前述の原作本コーナー最初の一冊が葉室麟作品だったことを考えると、館長の思い入れの深い推しコーナーであることが伺えます。

また、賞別のコーナーでは、過去に受賞した作品のラインナップを眺め、今年の受賞作はなにかな?なんて思いつつ本を手に取ってみるのも楽しいです。

隣の棚には、異色の「カレーの本コーナー」もあり、エッセイ、絵本、評論から漫画『美味しんぼ』(花咲アキラ 雁屋哲:作 小学館:刊)まで、様々なカレー関連の本が集められています。自分ではなかなか選ばない本も、テーマ別に固まって並んでいると、思わず手に取ってしまいます。

次は、さりげなく置いている『あん』(ドリアン助川:作 ポプラ社:刊 2015年に映画化されました)を中心とした樹木希林さんのコーナーをもう少し広げたいと考えているそうです。

カレーコーナーとさりげない樹木希林さんのコーナー。その下は葉室麟コーナー

スタッフにも利用者にも新着本は気になる存在

新しい本は、年に3回スタッフが購入します。アンテナを張り、新聞の切り抜きやリクエストカードをストックして、利用者目線で本を探して購入しています。

本のアンテナだけでなく、原作本コーナーの更新も考えながら、映画のアンテナも張っているそうです。原作本コーナーを作ったことで、購入する本を選ぶのにも力が入ります。

新しく入った本は、「新着本コーナー」に配架されます。人気があるので、貸し出しは5冊借りられる内の2冊までとしています。

新着本コーナー

本から始まる小さなコミュニティ

さて、本好きにとって、自分が好きな本を他の人が選んでくれることは何よりも嬉しいこと。堀川館長は、いろいろ考えて作り上げた原作本コーナーから本を選んでもらったりすると、やったー!と嬉しくなるそうです。また、小さなカウンターでの一人ずつの対応は、言い換えれば、利用者さんとの距離が近いということ。この本が面白かったよ、この作者の別の本も面白いよと、貸し出しの際に利用者さんが選んだ本から会話が広がることもあるそうです。

手前の横長の棚は、古いものをリメイクしたスタッフの自信作。後ろにはズラッとコミックがシリーズで並んでいます

図書コーナーの主な利用層は、学校帰りの小学生と近所のシニア層。小学生は返却処理をした本を自分で返しに行くのが決まり。それだけでもカウンターでスタッフとの会話が生まれます。ちなみに小学生には、占いの本、血液型の本、『ONE PIECE』(尾田栄一郎:作 集英社:刊)、『ドラえもん』(藤子・F・不二雄:作 小学館:刊)等のコミックや『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂シリーズ』(廣嶋玲子:作 偕成社:刊)等が人気とのこと。学校の図書室とは違ってちょっと肩の力の抜けた利用の仕方をしていることが伺えます。

シニア層では、サークルで利用する日に必ず本を借りていく人がいます。サークル内で読んだ本を紹介し合い、返却と同時に別の会員が借りていくこともよくあるそうです。

「本を借りる」「本を返す」「本棚に戻す」「本を貸し出す」という行為から、会話が始まり、小さなコミュニティとなっていきます。

“子どもは読まないでね”コーナー。コミックでも大人向けのものには、子どもが借りないようにきちんと注意書きがついています

六浦南コミュニティハウスの図書コーナーに流れる思い

ただ単に、私の好きな本がシリーズでそろっていることが嬉しくて、取材にきてしまいましたが、それ以上にいろいろ考えて図書コーナーが作られていることに、驚きと同時に感動を覚えました。

読み聞かせに使ったり、紹介したりする本を選ぶ時にありがちなのは、「話題だから」「問題提起しているから」「権威がある人から評価されているから」という視点ですが、ここには、一番大事な「きっと読んで楽しいから」という視点での本選び、コーナー作りがありました。

六浦南コミュニティハウス外観

コミュニティハウスの図書コーナーに行ってみよう!

本を借りるというのは、趣味が広がるということ。自分で購入するのは限りがありますが、図書コーナーでは気軽に借りられるので、ちょっと興味があるという程度で手を伸ばしやすく、その結果新しい世界が広がります。

自分の住まいの近くにある、区民の生涯学習を助けるコミュニティハウス。利用しないのはもったいない。イベント参加や会議室利用だけではもったいない。ぜひ図書コーナーに立ち寄って、気軽に本を読み、本を借りてみてください。思いがけず、面白い本、素敵な本、もしかしたら人生の指針になる本に出合うかもしれません。

写真・文=石若 聡子

Information

六浦南コミュニティハウス

金沢区六浦南3-22-1(六浦南小学校内)

TEL:045-785-7474

市民図書利用時間:月、水、木、土、日 10:00-17:00

https://officekanazawa.org/mutsumina/

この記事について

この記事は、取材の仕方や文章の書き方、写真撮影のコツを学ぶ「金沢区の魅力発見・発信講座」の受講者が、区民目線で実際に取材・執筆したものです。