鎌倉時代創建の東光禅寺

東光禅寺は、金沢区釜利谷南一丁目(小泉)の手子神社から白山公園を経て関東学院大学の金沢文庫キヤンパスに至る白山道の途中にあります。『新版 かねざわの歴史事典』(金沢区生涯学習“わ”の会、2010年)によると、白山道は、鎌倉時代中期の朝比奈切通開削前から鎌倉と釜利谷を結ぶ古道でした。鎌倉から金沢北条氏の居館・称名寺へは、鎌倉時代末期に瀬戸橋が出来るまでは、白山道から瀬戸入海の北側をまわっていくのが当時の幹線道路でした。

手子神社、白山道、東光禅寺の周辺地図
手子神社から白山道を通って東光禅寺へ
出典:電子地形図25000(国土地理院)を加工して作成

東光禅寺の前身は、鎌倉時代に畠山重忠が創建したと伝えられる鎌倉宮辺りにあった医王山東光寺です。室町時代に釜利谷白山道奥に移り、白山東光寺となりました。東光寺は関東大震災で倒壊し、昭和初期に現在地に再建され、後に東光禅寺となりました。本堂天井に描かれた大龍画は迫力があります。

月海豪澄(げっかいごうちょう)法師作の本堂天井に描かれた大龍画
本堂天井に描かれた大龍画
日本画僧、月海豪澄(げっかいごうちょう)法師作。龍神は、仏法の教えである「法の雨」を降らすと信じられているほか、水を司る神であるため、火災から本堂を守るという意味も込められている。昭和54(1979)年、本堂落慶を記念し完成。

世界各地の仲間と共に心を調える時間

オンライン坐禅会は、2020年4月の開始以来2021年11月まで50回にわたり、延べ約5,000人近い方が参加されています。毎月第二・第四火曜日に、米国・欧州との時差を考慮して日本時間で夜9時から10時まで、Zoomで開催されています。ホームページには英語ページも用意されており、海外から検索して申し込む人も多いとのことでした。コロナ禍以前からインバウンドの訪日外国人や横浜での国際会議参加者が横浜市文化観光局等の案内で東光禅寺を訪問することもあり、坐禅に興味を持つ人の間で知られていたそうです。

オンライン坐禅会では、まず日本語での説明の後、英語での説明があり、英国、オランダでの活動経験のある小澤さんはその準備に時間をかけています。そのおかげで、私も参加させていただいた9月28日には120名を超える参加者があり、世界各地から多くの坐禅仲間が距離を超えて心を調える時間を共有しました。

Zoomで開催されたオンライン坐禅会のパソコン画面の様子
オンライン坐禅会のZoom画面

国際協力の経験を生かす小澤大吾住職

小澤さんは、現在44歳、3人の娘さんの父親です。2015年に東光禅寺副住職、2019年2月に東光禅寺第22世住職に就任しました。

「お寺の息子に生まれたけれど、若いときから国際協力の世界で働きたいと思った」という小澤さん。大学卒業後はイギリスで障害者福祉ケアワーカーのボランティア活動をし、オランダの大学院で開発学を研究。帰国後は民間企業に勤務し、開発途上国の政府開発援助の広報・調査業務等に従事しました。リーマンショック時の社会の混乱に感じる所があり、仏教や禅、お寺というものの存在意義をもう一度見直し、東光禅寺を継ぐことを決意。鎌倉・建長寺僧堂と京都・建仁寺僧堂で合わせて5年近くに及ぶ修行をしました。臨済宗では坐禅と作務という労働が修行の中心で、托鉢(たくはつ)をして歩きます。さらに公案(こうあん)という、師匠と弟子が一対一で行う禅問答も大切な修行です。「これらの修行は大変厳しいものでしたが、禅寺の住職として求められる覚悟や心構えなど、かけがえのない多くのことを学びました」と小澤さんは話します。

コロナ禍で本堂での坐禅会に参加できなくなった人から「お寺で坐禅をする習慣がなくなって辛い」、「お寺に行く機会がなくなってしまい寂しい」との声が届きました。これを受けてご本尊の薬師如来様を拝んでいただくための動画『薬師如来の祈り』をYouTubeにアップロードしました。これは、お寺にお参りになった気持ちになって安らぎを感じてもらえればという思いからの企画です。この動画は既に8,000回近く視聴されています。

次に試験的に始めたのがオンライン坐禅会です。最初は50人程度の参加でしたが、口コミで広がったり、メディアに報道されたりしたこともあり順次参加者が増えていきました。

小澤大吾住職の写真
小澤大吾住職

今後の地域貢献活動と社会支援活動

オンライン坐禅会の活動が複数のメディアで報道されると、交換留学生制度のある複数の私立大学からオンラインでの禅の授業を頼まれるようになりました。外国から日本の大学に留学しようとしていた学生が来日できず、オンライン授業になっていることが背景にあります。また、LinkedInなど海外の企業への社内オンライン研修なども実施しているそうです。また、従来の本堂での坐禅会、写経会は、定期的な開催を始めています。

更に、2017年より続けている「NPO法人おてらおやつクラプ」を通じた食材提供支援では、食材や菓子類、清涼飲料水などを「金沢子ども食堂すくすく」さんに提供しています。

金沢区釜利谷東1丁目で約70年間東光禅寺住職が園長として運営していたルンビニー幼稚園は4年前に閉園。その後2021年4月から地域の方へのオープンスペース「ルンビニー-つながりの庭」として再スタートしました。ここでは、「子育てサークル金沢区ママ」が子育て支援スペース「monmo(もんも)」の活動をしています。その他、体操教室や幼児教室も開設し、「金沢子ども食堂すくすく」の支援物資倉庫としても利用されています。

地域の方へのオープンスペース「ルンビニー-つながりの庭」の外観写真
地域の方へのオープンスペース『ルンビニー つながりの庭』

コロナ禍で人々の交流が出来なくなった状況で、今まで養ってきた国際化能力、広報能力、人脈を活用してオンライン坐禅会を立ち上げた小澤さん。更に地域の社会貢献活動にも携わる企画力・実行力に敬服しつつ、インタビューを終えました。

写真・文=林 洋

白山 東光禅寺(臨済宗建長寺派)
〒236-0045
住所:横浜市金沢区釜利谷南2-40-8
電話:045-781-0271
FAX:045-781-9937
電子メール:info@tokozenji.or.jp
ウェブサイト:http://www.tokozenji.or.jp/

この記事は、取材の仕方や文章の書き方、写真撮影のコツを学ぶ「金沢区の魅力発見・発信講座」の受講者が、区民目線で実際に取材・執筆したものです。