子どもの成長はとても早くて、それが楽しみでもあり、少し寂しくもあります。とくに新生児の期間は短く、首がすわってハイハイができて、あんよができて、毎日が記念日でした。そして子どもにもらったたくさんの感動は、子どもが成長するにつれて、いつのまにか私の日常に変わっていきます。けれど、私がいつも子どもへの感謝を忘れずにいようと思えたのは、家族や友達、助産師さんに保健師さん、児童館のスタッフさんなどたくさんの人の支えがあったからです。みんなからもらった優しさに感謝し、今度は私が産前・産後の不安を抱えている方の背中を押せるように、参加して良かったと思う産前・産後の教室や心が和らいだ制度についてお伝えします。どうぞ想像を膨らませてご覧ください。

妊娠・出産を通して増えるコミュニティ

私は金沢区で生まれ育ちました。金沢区といえば海や山があり、春夏秋冬と表情を変えていく自然は、一年を通して私たちを楽しませてくれます。そんな慣れ親しんだ金沢区の良さを私が改めて感じることができたのは、妊娠・出産がきっかけです。住み慣れている私でさえ知らない場所や情報にあふれ、もっとこの町のいいところを探したいと思いました。

皆さんは「マタニティライフ」と聞いて、どんな様子を想像しますか?お腹の中にいる子どもに本を読んで聞かせたり、音楽を聴かせたり、心穏やかで笑顔にあふれている様子を想像する人も多いのではないでしょうか。かつての私がそのひとりでした。

しかし、私の場合は妊娠超初期から出産するまで悪阻(つわり)が続く日々でした。お腹の子の無事を願い、ただひたすら悪阻をやり過ごし、これから妊婦さんを見つけたら絶対優しくしようと心に誓ったほどです。そして何よりも母の偉大さを再認識しました。

私は母が大好きです。しかし私が小学生の頃に病を患い、高校を卒業する前に残念ながら他界しています。悪阻のことも出産のことも、もっともっと聞きたいことがたくさんあったのにと母が恋しくなり、一番頼りにしたい母が側にいないことがとても心細かったのです。そんな時に区役所で母子手帳と一緒に貰ったプリントを見て、産前・産後の教室を知りました。

私が体験した産前・産後の教室と、現在金沢区で子育て支援をおこなっている「とことこ」の活動をご紹介します。

仲間との出会いがある「両親教室」

私が初めて参加した教室は「両親教室」でした。両親教室は、金沢区役所が主宰する妊娠16週以上の妊婦さんとそのパートナーを対象にした教室です。『どれどれ』という子育てガイドブックを教科書にし、妊娠中の生活や母乳育児の準備・出産時の呼吸法などを勉強しました。私はこの教室で出産予定日が近い妊婦さんと出会い、子どもが大きくなった今でも交流が続いています。私にとって大切な仲間たちです。

筆者と「どれどれランチ」のメンバー
子育てガイドブックの名前から「どれどれランチ」と名付け、出産後にも集まり、どのような出産を体験したか、子どもが生まれて生活がどのように変化したか、旦那さんのイクメン具合などを語り合いました
子どもたちの写真
それぞれ引っ越しや復職等でライフスタイルが変わり、会う回数が減りましたが、今でも子どもたちの何かの節目には集まり、成長を報告し合っています

「両親教室」に参加して妊婦中の心と体の変化やこれから必要なものなど、出産に向けての準備を学ぶことができました。両親教室の最終日には同じ教室に参加していたママさんたちと連絡先を交換し、一番早い出産予定日のママさんのお腹を触らせてもらいながら「次に会う時は赤ちゃんはもうお腹から出て、ママの腕の中かもしれないね」と赤ちゃんに会える楽しみを話したり「頑張ろうね」と応援しあったりしました。なかでも「陣痛って鼻からりんごを出すくらい痛いらしいね」「違うよ。お尻からりんごでしょ?」などと陣痛への不安を笑いで吹き飛ばすなど他愛もない会話がとても楽しかったです。

ちなみに私の経験した陣痛の痛みは、まるで電気うなぎがお腹の中にいて強力な電気を放電しているかのような痛みです。あまりの激痛に今まで出したことがない叫び声が出ていました。

パートナーと育児をイメージできる「プレパパ・プレママ教室」

両親教室の他に区の福祉センターでは、金沢区地域子育て支援拠点「とことこ」主宰の「プレパパ・プレママ教室」があります。妊娠20週から34週の妊婦さんとパートナー対象の教室です。ぜひパートナーと一緒に参加してみてください。

この教室では、7キロの妊婦ジャケットをパートナーが身に付けて歩いてみたり、仰向けに寝てみたりと様々なミッションをクリアしていく妊婦体験ができます。少し恥ずかしそうにしながら妊婦ジャケットを付けているパートナーの姿に、私は笑いが止まりませんでした。今になって写真を撮っておけばよかったと少し後悔しています。

他に沐浴のレクチャーもあります。赤ちゃんの人形を使って実際にお風呂に入れる練習をします。体の泡を洗い流すのに夢中で、人形の顔がお湯の中に沈んでいるままでいるのを気付かないなどハプニングはありましたが、笑いあり発見ありのとても楽しい時間でした。実際に自宅ではパートナーが進んで沐浴をしてくれました。一緒に「プレパパ・プレママ教室」に参加してくれたパートナーにとても感謝しています。

産後の育児の不安をやわらげる母子訪問(新生児訪問)

退院後には区の助産師さん・保健師さんによる「母子訪問(新生児訪問)」があります。初めての赤ちゃんを出産した全ての家庭に訪問し、赤ちゃんの体重測定・授乳のことやお母さんの健康状態を相談できる制度です。

産後すぐに始まる不眠不休の赤ちゃんのお世話は、とても大変です。私は貧血と悪寒が続き、ずっと微熱があるような状態で思うように動けませんでした。「母子訪問(新生児訪問)」で訪ねてくれた助産師さんとの会話が久しぶりの大人との会話で、とても嬉しかったです。実際に赤ちゃんの身長・体重を測るだけでなく、病院では聞きにくい赤ちゃんに関する疑問や自分の体のことも気軽に質問できました。

「母子訪問(新生児訪問)」以外に、生後4カ月までの赤ちゃんがいる全ての家庭を民生委員・児童委員や子育て支援の経験がある地域の方が訪問する「こんにちは赤ちゃん訪問」があります。玄関先などで子育てに関する情報提供をしてくれるほか、揺らすとガラガラと音がする赤色のおもちゃ、通称ガラガラをプレゼントしてくれます。

我が家に訪ねて来てくれた地域の方は、偶然にも私の小学校のときの同級生のお母さんでした。懐かしい話に花を咲かせながら、近所にある赤ちゃんと一緒に遊びに行ける集いの場や親子イベントなどを教えてもらい、楽しみが増えました。

赤ちゃんの写真
 頭の一部が脈を打つようにペコペコしていたので気になっていたところ、母子訪問の時に大泉門(成長とともに自然に閉じる)と知り、安心したのを覚えています。

子どもが生後4カ月頃には、1歳未満の第一子の赤ちゃんと保護者を対象にした地域ごとの「育児教室」にも参加しました。赤ちゃんと一緒に楽しめる手遊びやふれあい体操などを保健師さんが教えてくれます。私も子どもも「ラララぞうきん」が大のお気に入りでした。現在は「地域育児教室」として0歳(1歳未満)の第1子と子ども1人につき保護者1人を対象に開催しています。

地域育児教室開催の写真
母親学級は同じ地域に住む子どもとママが大集合。家庭内での赤ちゃんの事故防止の話を直接救急隊員の方から聞ける機会があり、帰宅後におもちゃや家具の配置を見直すことができました

コロナ拡大後の「産前・産後教室」

コロナで生活が一変した現在、産前・産後の教室はどのように行われているのでしょうか。「金沢区子育て支援拠点とことこ」施設長の安田みゆきさんにお話を伺いました。

「プレパパ・プレママ教室」は、もともと横浜市の子育て支援事業の一環で、「とことこ」に委託されたのは2013年4月から。現在は、参加組数を減らして金沢区役所の5階にある健診室を会場とし、パートナーが一緒に参加しやすい土曜日に開催されています。出産予定日を含めた簡単な自己紹介をし合うものの、感染予防等を考慮し、参加者同士でグループを作ってのディスカッション等は行っていません。内容は、主に赤ちゃんのお風呂の入れ方や妊婦体験です。

「とことこ」の施設長安田さんの写真
「とことこ」の施設長である安田さんは、ご自身も仕事と子育てを頑張っている先輩ママさん。「とことこ」へ遊びに来ているママさんやお子さんに優しく声をかけてくれます。娘さんの好きな食べ物は麻婆豆腐ですと笑顔で話す姿が印象的でした

妊娠中のハプニング

産前にダウン症や口唇口蓋裂などがわかった際に相談できる場所には、どのようなところがあるのでしょうか。安田さんは「公的な支援や専門的なアドバイスを求めるのであれば、区役所や病院へのご相談をご案内します。求められていることが、話を聞いてほしい等、様々な心境であることが多いので、ママと一緒に考え、ママの気持ちに寄り添いたいと考えています」と話します。

「金沢区には、障がいや発育に不安を抱えた方の為のコミュニティーがいくつもあります。例えば妊娠中に障がいが発見された場合、産後どのような生活か想像できずに不安があるとおっしゃるのであれば、現在障がいのあるお子様と一緒に生活をされているご家族を紹介し話を聞かせて貰う等のサポートができます。まずは、助けてもらうことをためらわずに『とことこ』へご連絡下さい」

たくさんの情報が貼られた「とことこ」の掲示板
「とことこ」の掲示板にはたくさんの情報がありました。お知らせの他にもコミュニケーションカード等もあり、色んな方に利用してほしいというスタッフの方の優しさを感じられました

私も子どもが小さい頃によく利用していた「とことこ」は、ママと子どもたちの笑顔があふれる場所です。現在は感染症対策のため午前・午後入替制で完全予約制になっていますが、初めての方が気兼ねしないように「はじめてのとことこ」や「タッチケア」などのイベントの日も継続中です。また、新しいつながりの形としてオンライン子育てプログラムも実施しています。

「とことこ」参加者の写真
とことこの「タッチケア」ももちろん参加済み。各々バスタオルを持参して赤ちゃんのマッサージとふれあい遊びをします

金沢区では他にも「歯ぴか教室」や「離乳食教室」などの健康教室が実施されています。子どもの年齢に合わせた教室になっていますので、ぜひ横浜市のホームページで探してみてください。そこには子どもとママに優しい子育てのヒントがあるかもしれません。

「とことこ」の入口の写真

写真・文=小野瀬由起子

金沢区地域子育て支援拠点 とことこ
〒236-0058
横浜市金沢区能見台東5番6号2階
アクセス:京浜急行「能見台」駅から徒歩5分
TEL: 045-780-3205
FAX: 045-780-3206
時間:9:30~15:30
※午前・午後入れ替え制です。
休館日:月曜・日曜・祝日・年末年始
http://www.tokotoko-kanazawa.jp/
現在「とことこ」は完全予約制です。
毎週土曜12:00から翌週の予約を開始しています。
詳しくはホームページをご確認下さい。

この記事は、取材の仕方や文章の書き方、写真撮影のコツを学ぶ「金沢区の魅力発見・発信講座」の受講者が、区民目線で実際に取材・執筆したものです。