「ゆっくりなカフェへようこそ」

カフェ波輝の看板には「ゆっくりなカフェへ」と書いてあります。お店に入るとコーヒーのよい香りがします。

ゆっくりなカフェへと書いてあるカフェ案内のチョークボード
ゆっくりなカフェへようこそ!

入口に近い席でゆっくりとコーヒーミルのハンドルを回す女性がいます。席に着くとお水をゆっくりと丁寧に運んでくれるスタッフさん。ここはすぐそばにある「生活介護事業所 波輝」に通う障がいのある人たち(メンバーさんと呼ばれています)が働くお店なのです。

「生活介護事業所 波輝」に通う障がいのある人たち
コーヒーミルの台はメンバーさんが使いやすいように工夫されています

松本さん曰く、「並木は穏やかな空気が流れていて、優しい人が多いホッとする街なんです」そんな街だからこそ、ゆっくりなカフェが似合っているのですね。

開店当初は飲み物のみの販売からスタート。一つひとつゆっくりと覚えていくメンバーさんたちに合わせてメニューを増やしていったそうです。今では火・水・木曜日に提供されるワンコインのランチセットや「給食ランチ」と充実してきました。給食ランチはメンバーさんの給食と同じメニューをお客さんにも食べてもらい、地域の方々とつながり合う取り組みとして始めたものです。

黒板書かれたメニューや案内の写真
商店街に来る人が楽しみにしているカフェの外側に取り付けられた黒板とメニュー表

お店の外の黒板の給食メニュー表を見て来られる地域の方々が多く、特にとんかつや生姜焼きなどのお肉のメニューが人気だそうです。

冷やしたぬきうどんと揚げたてのたっぷりの野菜天ぷら
筆者が取材に行った日の給食ランチは、冷やしたぬきうどんでした。揚げたてのたっぷりの野菜天ぷらが添えられて、おなかいっぱいになりました

見ているだけでも楽しい小箱ショップ

カフェ波輝のもう一つの魅力は小箱ショップ。雑貨好き女子には見ているだけで楽しい空間です。こちらには区内の障がい者の作業所や近隣の手作り作家さんの作品が並んでいます。小さな子どもから年配の方まで幅広いファンが通って来るそうで、クチコミで小箱ショップに作品を置きたいと希望する作家さんも増えてきているということから、その人気ぶりがわかります。

小箱ショップ店内の写真
お店に入ったら見入ってしまう小箱ショップと店内

小箱ショップでの人気商品を聞いてみました。作業所の作品では、1位は紙ひもで編んだ四角い収納ケース。お値段も手頃なのですぐ売り切れるのだそうです。2位はアイロンビーズのマグネット。色々なデザインがあって、冷蔵庫のドアが楽しくなりそうです。作家さんの作品では布ぞうりが人気で、一度履くとクセになる履き心地だそう。取材しているときにも「これ、すごくいいのよ!」と買って行かれるお客さまを目撃しました。2位は動物の顔をした編み込みのがまぐち財布。筆者も一番に目が行きました。

小箱ショップの商品
小箱ショップの売れ筋商品

そのほか、頻繁に作品の入れ替えをされる作家さんの商品は、来るたびに楽しみにされている方が多いそうです。お友達と来店されて、あれこれ品定めをしながら作品情報の交換をされる姿も見られました。

人が集い、楽しめる場所へ

2020年の春から、コロナ禍で私たちはこれまで経験したことのないステイホームの毎日、友達と会っておしゃべりすることも出来ない日々を送ってきました。

時を同じくしてオープンしたカフェ波輝。思い描いていたような運営もままならなかったのでは、と思います。10月に入り、やっと制限が緩和されてこれまで我慢していた外出や人との交流も出来るようになり、並木の街も活気がよみがえってきました。

9月に取材をした時、カフェ波輝をどのように運営していきたいですか、の質問に「ワークショップや手作り作品のフリーマーケットなど、地域の人とふれあえる場になっていってほしいですね」と、おっしゃっていた松本さん。

11月に訪ねた時は、商店街の通路に机を並べて小箱ショップの作家さんたちが商品を販売していました。お店の外での対面販売だと作家さんとのコミュニケーションも生まれ、会話も弾みフリーマーケットのような楽しい雰囲気を味わえました。この日はお天気も良く、メンバーさんたちはふなだまり公園(富岡並木ふなだまり公園)周辺のゴミ拾いへ。地域から愛される作業所を目指してこんな活動もしているのです。

カフェ波輝は、土曜日、日曜日がお休みで営業日も16時に閉店するので、ちょっと勿体ない気もします。が、毎月第3土曜日に地元の有志の方が運営する「地域食堂みんなでごはん」さんに場所をお貸ししています。「食を介して地域のつながりを作っていく」ことを目指している子どもから大人まで利用できる予約制の食堂です。

近々、すぐそばの地域のコミュニティ拠点・並木ラボでもカフェがオープンする予定という情報もいただきました。「夕方の時間はそちらにどうぞ、とお声かけできれば……」とはさすが「ゆっくりなカフェ」波輝さんのお言葉です。地域での共存を目指す意気込みが伝わります。

手洗い場の写真
コロナ対策はしっかりとされていて、顔を近づけるタイプの検温計、消毒液が完備。カウンターの近くにはどんな人にも使いやすい手洗い場(写真)があり、テーブルにはアクリル板の仕切りを設置。入場制限することもあるそうです

ちょっとお茶する場所、ランチする場所、お気に入りの小物を見つける場所から地域の人が集い楽しめる場所、いろんな顔が見える場所として、カフェ波輝の今後が楽しみです。

富岡八幡宮の社叢林の写真
カフェ波輝のそばのふなだまりと富岡八幡宮の社叢林。お散歩したあとに立ち寄る場所が出来てよかった~!

写真・文=中村泰子

カフェ波輝
〒236-0005 横浜市金沢区並木1-17-6-5
電話:045-349-3085
営業時間 10:00〜16:00  ランチ提供日(火・水・木)
定休日:土・日・祝日・年末年始

この記事は、取材の仕方や文章の書き方、写真撮影のコツを学ぶ「金沢区の魅力発見・発信講座」の受講者が、区民目線で実際に取材・執筆したものです。